ビジネス・バリュエーションをめぐる国内外の状況は変化しつつあります。国際評価基準審議会(IVSC)は、自らが公表する国際評価基準(IVS)のグローバル基準化を目指して、2015年にその組織体制を変更し、その結果、IVSを設定する基準レビュー委員会の下に、有形資産基準理事会、ビジネス・バリュエーション基準理事会及び金融商品基準理事会を持つ組織に変貌しました。これによって、IVSを受け入れる国々が増えつつあります。
このような中、ビジネス・バリュエーションの分野では、各国の経済活動におけるM&A目的の企業評価や財務報告目的の知的財産権などの無形資産評価の重要性が増々認識され、ビジネス・バリュエーションを行う評価人に対する期待とその質の向上が叫ばれるようになってきております。また、APECにおいても、この地域の経済発展の基盤整備の一環として、不動産評価及びビジネス・バリュエーションに関する専門職業の質の向上の必要性が叫ばれ、域内各国でIVSを評価基準として導入するとともに、評価を担う評価専門職の業界団体の設立の機運が高まってきております。例えば、シンガポールでは、2016年に政府と大手会計事務所が協力してInstitute of Valuers and Appraiser, Singapore(IVAS)を設立し、シンガポール内だけではなく、外国の専門家にも研修と資格を提供しています。
このように、ビジネス・バリュエーションが、経済活動の重要なインフラとして認識され、世界各地で、その専門家である評価人の質の向上や教育などを担う組織の設立が続き、統一した枠組み作りや基準の制定に向けた具体的な活動が見られます。それによって、今後世界的にビジネス・バリュエーションに関与する評価人には、より組織化し高い専門能力に基づいたサービスの提供が求められる状況になってきていると言えます。
一方、強い経済力を持ちAPECのメンバーでもある日本においては、これまで、こうした枠組み作りや基準の制定に向けた公式な活動は存在せず、現在、誰でも自由に企業評価を行うことができる状況です。そのため、国内では多様な評価人が企業評価を行っており、その品質は玉石混交であるとも言われております。また、こうした状況を問題視し、日本のビジネス・バリュエーションの品質が世界的な信認を得、それを維持向上させていくためには、評価人の質の向上を図るための具体的な行動を起こすべきとの意見も多く聞かれるようになってきました。
このような日本の状況及び世界的動向を踏まえて、日本においても、ビジネス・バリュエーションを行う専門家の組織(Valuation Professional Organization; VPO)の設立を検討する時期に来ているのではないかという認識の下、我々は2018年よりIVSC円卓会議という名称で、APECからの要請を受けたIVSC評議員を含む国内のビジネス・バリュエーションに関連する有志による非公式な議論が続けられてきました。なお、この有志は、Big4と呼ばれる大手監査法人の評価チームや独立系の評価会社などビジネス・バリュエーションのサービスプロバイダーのメンバーに加え、IVSCのメンバー、日本公認会計士協会のメンバー、不動産鑑定士や資産評価士などにより構成され、それぞれが所属組織から独立した立場として自主的に参加しています。IVSC円卓会議は、新型コロナウイルスの感染拡大による中断を挟みつつも、これまで足掛け5年の期間にわたり、日本におけるVPO設立の是非と共にその理念や社会的意義、ビジネス・バリュエーションの品質向上に向けた課題や方法論、ありうべきVPOの活動の形として研修、資格(Quality Mark)、倫理基準や評価基準設定の必要性など、様々な事柄について話し合ってきました。その結果、我々としては、日本におけるビジネス・バリュエーションのVPOを設立することが必要であるという思いを強くするに至っております。
とは言え、VPOの設立にむけてはまだまだ整理をしなければならない事柄が多く残されています。ビジネス・バリュエーションの周囲には様々なステークホルダーが存在するため、設立されるVPOの理念や役割などついても様々な考え方があるでしょうし、そもそものVPOの設立の是非に関しても我々とは異なる意見があるかもしれません。また、VPOのあり方や運営方法についても様々な意見があるだろうと考えられます。IVSC円卓会議のメンバーはそれぞれ完全なボランティアとして議論を重ねておりますが、このような点を踏まえ、限られたメンバー間での議論をさらに一歩進め、我々の活動を幅広い層に知っていただくと共に様々なご意見をお聞かせいただきたいと考え、当Webサイトを立ち上げる運びとなりました。当Webサイトでは引き続きIVSC円卓会議としての我々の活動内容に加え、ビジネス・バリュエーションに関する様々な情報発信や問いかけなどをさせていただこうと考えております。