金融市場のグローバル化・ボーダーレス化に伴い、投資資金の国際間移動が進む中で、日本の企業会計は国際会計基準(IFRS)へのコンバージェンスに合意し、両者の差異を無くすような手続きが進められている。不動産を含む資産の評価においても同様であり、国際評価基準審査委員会(IVSC)は国際評価基準(International Valuation Standard、以下IVS)を策定し、現在IVSは国際的統一基準として広く認知されるに至っている。
しかし、過去においては評価基準が統一されておらず、各国が種々の評価方式と適用していた時代があり、財務諸表作成の基礎となる固定資産の評価基準が国により異なる点は企業の国際化のボトルネックとなっていた。そのため、地理的にクロスボーダー取引が頻繁に行われ、多数の民族と言語が入り交じったヨーロッパで統一的な評価基準のニーズが高まり、アメリカ、カナダ、オーストラリア等がこの動きを支持する形で、1981年10月にオーストラリアのメルボルンで行われた第11回汎太平洋不動産鑑定会においてIVSCの前身である国際資産評価基準委員会の設立委員会(The International Assets Valuation Standards Committee、以下TIAVSC)が発足した。公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会(以下、連合会)においても、当時の世界情勢及びTIAVSCの性格を検討した結果、TIAVSCへ正式に加盟することになり、以降、IVSCが評価業務の発展への貢献及びその責任を有する専門機関として認めるValuation Professional Organization(VPO)の一員として活動を行い、IVSCの理事会への委員派遣等を通じてIVSの普及推進に貢献している。
不動産評価の分野において、日本は「不動産の鑑定評価に関する法律」の元に国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」があり、会員である不動産鑑定士は「不動産鑑定評価基準」を遵守することが求められている。また社会的なニーズの変化等に伴って当該基準を改正等が必要な場合においては、連合会が国土交通省を実務的な観点からサポートを行いながら実務指針を策定することで、会員への周知や研修を通じて日常的に不動産鑑定評価の品位の保持及び資質の向上に努めている。
一方、近年、不動産鑑定評価手法の考え方を活用した新たな業務領域の拡大化が進んでおり、日本でビジネス・バリュエーションを担当する不動産鑑定士も存在している。グローバルな視点から見ると、連合会と提携関係にある世界各国の評価団体においても、例えば、英国のRICS(Royal Institution of Chartered Surveyors)や米国のASA(American Society of Appraisers)は不動産に係る評価基準に加えてビジネス・バリュエーションに係る評価基準等を有しており、不動産の評価人が不動産以外の評価に携わる場合における統一的な指針や行動規範が確立されている。
日本においても、ビジネス・バリュエーション分野における評価団体設立に関する検討がIVSC主導で始まっており、連合会をはじめ日本公認会計士協会、日本資産評価士協会などが検討に参画している。ビジネス・バリュエーション分野における評価団体設立の是非および進め方などについては連合会としても注視していくこととし、不動産以外の分野でも客観的かつ公正な評価が行われる基盤ができることを期待している。